卒業式の定番となっている袴スタイル。一方で、卒業式以外に着る機会がほとんどないことから、詳しいことが不明で謎が多い衣装でもあります。そのため、真偽が不確かな情報も見受けられ、何を信頼するべきか…と混乱してしまう方もいるようです。そこで今回は、そんな情報の中から「卒業袴にはヘラがついている」「ヘラがないと上手く着付けができない」という話題について、詳しく解説したいと思います!

 

【目次】


袴の基本的な構造と特徴はどうなっているの?

 

袴はどんな手順でどんなふうに着付けるの?

 

袴の「ヘラ」とは? どこにあって、何の役目をするもの?

 

ヘラがないと袴の着付けは上手くいかないの?

 

 

袴の基本的な構造と特徴はどうなっているの?

袴には、大きく分けると「馬乗袴(うまのりばかま)」と「行燈袴(あんどんばかま)」の2種類があります。そして卒業式に着用される袴は、行燈袴が主流です。

 

袴は主に馬乗袴と行燈袴の2タイプ

馬乗袴は、もともとは江戸時代の武士が身につけていた袴で、主に乗馬の用途で使われていました。馬に跨りやすいように脚が二股に仕切られたズボン状の構造になっているのが特徴です。ズボン状なので足さばきがしやすい反面、トイレがしにくい構造とも言えます。

一方、行燈袴は明治から大正時代にかけて女学校の制服に採用された袴で、女袴と呼ばれることもあります。こちらは脚に仕切りのないスカート状の構造になっているのが特徴です。スカート状なのでトイレの際はめくりあげるだけですが、脚さばきはしにくい構造と言えるかも知れません。

また、同じ行燈袴でも男性と女性では着付け方に違いが見られ、男性は腰の高さで着付けますが、女性は胸の下の高さで着付け、女性の方がより高い位置になるのが特徴です。

 

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袴はどんな手順でどんなふうに着付けるの?

全身に一枚の着物を纏うスタイルが多い和装の中で、上半身と下半身が別々になった袴スタイルはめずらしいケースです。洋装で言えば、シャツとパンツのようなスタイルですが、どんな手順でどう着付けるのか、想像がつかない人も多いかもしれません。

 

まずは着物を帯で固定し、その上を覆うように袴を着用

どんな袴スタイルも、基本的な着付けの手順は同じです。先に着物を着用し、着崩れないよう背面で帯結びをしてから袴を着用します。この時、結んだ帯を上から袴で覆うように着付けるのが特徴で、背面には袴スタイル特有のふくらみが生じます。帯結びの上に袴を着付ける形になるので、振袖などのように後ろ姿に立体感のある華やかな帯結びが見えることはありません。

袴のヘラ_着付け方

なお先述したように、卒業袴に多い行燈袴タイプには腰板がありません。そのため腰回りの着用感は圧迫が少なくラクなのですが、帯結びの上に安定よく着付けるにはコツが必要です。背中の中心にくる袴の後ろ紐の下辺を帯結びの上にぴったりと乗せ、紐自体は体に沿わせてしっかりと結びます。この時、袴の紐をやや斜め下に下げる感覚で結ぶと、袴が帯結びの上に安定します。しかし不慣れな人が着付けると安定感を長く保つことができず、帯結びの位置ごと袴が下がって着崩れが起きるケースがあります。

 

 

袴の「ヘラ」とは? どこにあって、何の役目をするもの?

袴の構造と着付け方の基本が分かったところで、問題の「ヘラ」の話題に移ります。袴のヘラとは何のために、どこにあるものなのでしょうか。

 

ヘラの位置は袴の後身頃の内側

ヘラは、一見して分からない袴の内側についています。袴は前後2枚の生地で構成されていますが、その後ろ側の生地(=後ろ身頃)の中心です。多くの場合、後ろ紐の下辺のあたりに細い紐やゴム紐が縫い付けられており、その紐の先端にヘラがついた形式です。紐の長さに特定の決まりはなくメーカーによってまちまちで、ヘラの形状やサイズもさまざまなタイプがあるようです。

袴のヘラ_位置と役割

 

ヘラの役目は袴の固定

このヘラは、着物と帯結びの間に上から差し込むような形で使用するのが主流ですが、ヘラについている紐が長い場合は袴紐にからめて使用することもあるようです。こうすることで、袴を着付けた位置がズレないようキープするのがヘラの役目です。しかし、ここで重要なのはヘラそのものよりも、着物の帯結びや袴の紐結びです。もし帯結びがゆるく、袴を着付ける土台として安定性が不十分であれば、袴の位置をしっかりキープすることができません。また袴の紐結びも、不必要なゆるみがあると位置が下がってきてしまいます。これでは、いくらヘラを使っても意味をなさず、袴がズリ落ちてきてしまいます。つまり、ヘラは袴を固定するための「補助的パーツ」であり、絶対になくてはならないパーツではないのです。

 

 

ヘラがないと袴の着付けは上手くいかないの?

現代は、日常的に着物を着用する人は多数派ではありません、また、袴を着用する機会や用途は、卒業式や結婚式の晴れ着、剣道や弓道などの道着というふうに限られます。そういった背景から、誰もが簡単により確実に袴を着付けられるようヘラが普及していった…と考えられるかも知れません。

袴姿の女性2人

 

結論から言うと、ヘラがなくても大丈夫!

現在、レンタル店やフォトスタジオなどが取り扱っている卒業袴には、ヘラがついているものも多いようです。袴の着付け方を紹介するWebページや動画でも、ヘラがある前提で手順の説明がされているケースが見られます。そのため、着用予定の卒業袴を確認して「ヘラがついていない!」「この状態で着付けは大丈夫?」と焦りを感じる方もいらっしゃることでしょう。ですが、ヘラがついていない卒業袴があるのは当然です。なぜなら、ヘラはあくまで袴のズリ落ちを防ぐための補助パーツ。きちんと正しい方法で着付けられていれば、なくても大丈夫だからです。ヘラがついていないからといって、その袴が「不良品」ということでは決してないので安心してください。また、袴を着用した際は所作の一つひとつが着崩れを回避する有効な対策です。以下のページでは、卒業袴の着崩れを起こさないための所作についてご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

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下手に使うとヘラが着崩れの原因になることも…

袴のズリ落ち防止に一役買う存在のヘラですが、ヘラがあるから安心!とも言い切れません。先述したように、帯結びと帯結びがしっかりできていないと、ヘラの存在意義は薄れます。また、それらがきちんとできていても、ヘラを差し込む位置が悪かったり、ヘラについている紐の長さが不適切だったりすると、見た目の美しさを損なったり、着崩れを引き起こしたりすることもあります。

例えば、帯の結び目の真ん中に差し込まないと、背中側のふくらみが左右に曲がってしまうことがあります。また、袴とヘラをつなぐゴム紐が劣化で伸び過ぎていたり、紐が必要以上に長かったりすると、帯結びと袴の間に隙間ができてしまい、ヘラによる安定化の意味を成しません。逆に、紐が短すぎると、袴が帯結びの方へ引っ張られて背中側のふくらみが潰れてしまいます。この状態になると、武道技や男性用として着られることの多い馬乗袴のような印象になってしまいます。他にも、椅子から立ち上がる時に袴の後ろを踏んでしまった場合などは、袴がヘラを引っ張る形になるため、帯結びにダメージを与えかねません。強い力が加わったことで袴だけでなく帯結びごとズリ落ちてしまうことも考えられます。

このように、適切に使わなければヘラにもデメリットがあることを認識しておきましょう。メリット・デメリットを考慮した上で、あえてヘラを使わない着付け師もいらっしゃいますが、それは着姿の美しさを保つため、着崩れを防ぐための方法なので安心してください。

 

 

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人生で一度切りの着用になることも多い卒業袴ですから、最後まで着崩れることなく、美しく着こなしたいですよね。晴れ着の丸昌 横浜店では、大学生協と提携して卒業袴のレンタルサービスを実施しており、このサービスでは卒業式当日の着付け、ヘアーメイクといったお支度もサポートしております。着付けにあたるのは、和装の知識、技術に長けた、経験豊富な着付け師ですので、安心してお任せいただけます。関心を持たれた方は、ご自身の学校が提携校に含まれているか、ぜひ一度ご確認ください。

 

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