卒業式を華やかに彩る衣装として人気の高い袴。実はその歴史的な背景から見ても、学業における大切な場面に見合った装いと言え、卒業生だけでなく先生が着用するのにもふさわしい衣装なのです。今回は、先生向けのスタイルの中でも、正統派と言われることの多い色無地×袴の着こなしについてご紹介。生徒たちの門出を、いつもとは違う特別な袴姿で見送ってあげたい…とお考えの先生はぜひ参考になさってください。

 

先生にふさわしい卒業式の服装とは?

学生生活を締めくくる卒業式は、学校行事の中でもとりわけ重要な行事です。学校を巣立っていく生徒にとっても、送り出す先生にとっても大きな節目となるため、式典も厳かな雰囲気で行われます。普段とは違う改まった場面なので、式典に臨む人はその場にふさわしい服装を選ばなくてはなりません。ですが、具体的にどんな服装をするべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

 

卒業式などの式典での服装は「正装」が基本

卒業式や入学式など、式典が執り行われるような改まった場では、和装/洋装に関わらず、正装で臨むのが望ましいと言えます。正装という、きちんと整った品位ある装いをすることで、その場面や人に対する想いを表現する、心のマナーとも言えるかも知れません。

 

なお正装には段階があり、格が高い順に「正礼装」「準礼装」「略礼装」となります。このうち、どの装いがふさわしいのかは、当事者の立場によっても異なりますし、式典によってはドレスコードが指定されることもあります。また洋装は、正礼装とドレスコードの指定があった場合でも、時間帯によって服装を変える必要があるため、それらも考慮して選ばなければなりません。

 

正装には、こういった細かな基準・ルールがつきもののため、堅苦しさや面倒臭さを感じる方も多いと思いますが、この機会に正しいマナーや着こなしを身につけておくと、卒業式に限らず、改まった場面での服装で困ることが少なくなるでしょう。

小学生卒業式_当日の準備

 

卒業式の「主役」は生徒なので、先生は控えめに

ここからは、卒業式への参加者の中でも「先生」という立場において、ふさわしい服装を詳しく解説していきます。まず大前提として、卒業式は学業を修めた生徒のための式典であり、主役はその生徒たちです。ですから、先生の装いは主役よりも控えめであるべきだと言えます。目を引く派手な色、奇抜な柄は避け、落ち着いた印象のものを選択しましょう。またこれは、衣装だけでなく髪型やメイクも同様と考えてください。

 

洋装の場合、卒業式の先生の服装は、正礼装や準礼装に当たる黒色のスーツスタイルが定番です。また、在校学年を担当する先生など、立場によっては濃い紺やグレーなど深みのあるダークカラーのスーツなど、準礼装の場合もあるかも知れません。黒・紺・グレーのスーツなら、ビジネススーツやリクルートスーツと同じでは?と感じる方がいらっしゃるかも知れませんが、それらと礼装用のスーツは異なります。礼装は、場にふさわしい生地の質や色、デザインが採用されており、品格の高さにおいて大きな差があります。また、礼装用のスーツであっても、弔事の時にだけ着用する喪服は、晴れの場である卒業式にはふさわしくありません。卒業式の先生の服装は保護者の方々の目にも触れるものですので、場違いな服装をしていると、恥ずかしい思いをしかねません。どれを選べばいいか判断がつかない場合は、経験豊富な先輩教師や取り扱っているお店の方にアドバイスしてもらって選ぶと安心です。

 

一方、和装の場合は、男性なら紋付袴、女性なら色留袖、訪問着、色無地あたりの着物か、それらの着物に袴を合わせたスタイルが主流です。ここで例に出した着物はどれも礼装に当たり、品格の高い衣装であることは間違いありませんが、着物に入った紋の数や合わせる帯により格の高さが違ってきます。どの格の装いがふさわしいかは、校長、教頭、卒業生の担任など、先生の立場によって異なりますので、これもまわりの先輩教師やお店のスタッフに相談して決められると良いでしょう。

 

「袴」は学業の場にふさわしい服装

先程、女性の袴スタイルも主流であることをご紹介しましたが、中には「先生が袴を着ても良いのだろうか…」と疑問や不安を抱えている方がいらっしゃるかも知れません。そこでここでは、女性の袴にまつわる話をご紹介したいと思います。

 

時代は今から遥かに遡りますが、平安時代、宮廷に支える女性は袴を身につけていました。袴は、身分の高い女性の服装だったのです。その後の江戸時代は、身分や性別によって身なりが厳しく定められた時代でしたが、この時も宮廷の女官たちだけは袴を身につけることが許されていました。そして明治時代に入ると、高等女学校の制服として袴が採用され、学校では生徒だけでなく教師も袴を着用していたそうです。着物のように裾が乱れにくく、動きやすいという機能面に加え、優美さと礼容を兼ね備えた服装だったことも、袴が採用されたポイントだったようです。このような歴史的な背景もあり、袴は学業の場との結びつきが深く、学校の重要行事である卒業式に見合った服装として、現在まで受け継がれているのでしょう。

出典:跡見学園女子大学花蹊記念資料館所蔵

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色無地とはどんな着物?どう着こなす?

女性の先生が袴を着用する際に合わせることが多い色無地という着物。これは一体どんな着物なのか。そして卒業式の場合、どのように着こなせば良いのか、詳しくご紹介していきます。

 

色無地は、幅広く着こなせる着物

生地全体を一色に染めて仕立てた着物を色無地と言います。未婚/既婚、年代を問わず着用できる着物で、紋の数や合わせる帯により格が変わることから幅広い場面で着用できます。無紋で着ることも多いですが、格高に装えるよう三つ紋や一つ紋を入れる場合もあります。ひとつでも紋を入れると無紋の訪問着より格上となり、三つ紋の入った色無地は、一つ紋の訪問着より格上となります。

 

デザインの面では、柄のない無地の着物なのですっきり端正に見え、色選びさえ間違えなければ、落ち着いた印象で着こなせるのが特徴です。そのため、先生が卒業式に着る衣装として重宝されます。通常、明るく華やかな色は吉事に着用し、暗く沈んだ色は凶事にも用いられます。卒業式は吉事ですので、暗い色は避けるのが無難と言えるでしょう。

 

レンタル店には袴専用の色無地があるケースも

なお、色無地は本来、袴を合わせずに、そのまま一枚で着用できる着物です。そのため、裾の長さは身長より長いのが通例です。ですが、袴と合わせて着ようとすれば、その長い裾をたくし上げて着付けなければなりません。これだと着付けの処理が大変になるうえ、着ている本人も動きづらいなどの難点があるため、レンタル店では袴と合わせることを前提とした色無地が用意されているケースがあります。つまり、卒業式に特化した袴専用色無地です。専用に開発されているため、裾の長さが一般的な色無地よりだいぶ短めで、袖の振りもやや短め。着物を着慣れていない人でも動きやすいよう工夫されています。また、紋も無紋や一つ紋のものが多いようです。手持ちの色無地がある方は、それを活用されると良いですが、卒業式用にレンタルをお考えの方は、こういった袴専用の色無地を活用されても良いでしょう。

 

色無地のコーディネートのヒント

先述したように、色無地は着る人を選ばず幅広い場面で着用できる着物ですが、どのように着こなすのが適切かは、その人の立場やそれぞれの学校の慣習、校風などによっても変わってくるでしょう。

 

格式に関して言えば、学校のトップを務める校長先生は、色無地よりも格上の着物である色留袖(五つ紋or三つ紋)を選ぶ方が良いかも知れません。この場合、校長の補佐役である教頭先生は、校長先生より格を抑えて三つ紋の色無地、クラス担任の先生は、教頭先生よりも格を抑えて一つ紋か無紋の色無地を選ぶと良いでしょう。ただし、これは色無地を着ることを前提とした例です。卒業式にふさわしい着物は色無地以外にもあるので、その場合はご自身とまわりの先生の立場を考慮して選択してください。

 

また、デザインに関して言えば、色無地には実にたくさんの色が存在しますが、あまり華美な印象のない色を選ぶのが無難でしょう。彩度の高いビビッドな色よりも、パステル調などの淡いトーンの色を選ぶと、穏やかで落ち着いた印象で着こなせます。合わせる袴は、濃紺や紫、深緑やエンジなど落ち着いた単色のものにすると、すっきりとしたコーディネートに仕上がります。もし、刺繍やグラデーションなどのデザインがある袴を選ぶ場合は、できるだけシンプルなものが良いでしょう。

 

足元は和装の原則とされる草履が好ましく、足袋は礼装用の白足袋を合わせましょう。袴にブーツを合わせる「ハイカラさん」スタイルもモダンで素敵に見えますが、正式な礼装のスタイルではないので避ける方が無難です。

 

先生のヘアメイクのヒント

先生は主役ではないので、衣装と同じようにシンプルな髪型が好ましいでしょう。髪飾りも大ぶりなものや派手なものなど目立ち過ぎるものは避け、清楚な印象にまとめましょう。ロングヘアの場合は、アップスタイルですっきりまとめると良いでしょう。お辞儀をする機会が多いので、その度に髪を直さなくて良い髪型をおすすめします。

 

メイクはいつもより少しだけ華やかに。薄化粧だと、寂しく見えることもあるので、全体のバランスを見て、晴れの場にふさわしいメイクに仕上げましょう。ただし、パーティメイクのように肌質をパールやラメでキラキラさせる、まつ毛をボリューミーに盛る、唇をグロスでテカテカにするのはNG。いくら華やかに見えても和装とはミスマッチで、アンバランスになるので注意してください。

 

衣装のコーディネートにしてもヘアメイクにしても、学校や地域ごとの慣習もあるので、まわりの経験豊富な先生にNG事項について事前に確認しておくのが安心です。

 

 

先生におすすめの色無地×袴スタイル

色無地を採用した袴スタイルについて、先生が押さえるべきポイントを解説してきましたが、この最後の段落ではおすすめのスタイルを具体的なコーディネート例とともにご紹介します。

 

ですがその前に、まずは袴のコーディネートの基本について。袴スタイルは、着物と袴の組み合わせで完成しますが、この時の色合わせを「同系色」にする、または「反対色」にするのが、コーディネートの基本とされています。つまり、この考え方で組み合わせれば、ほぼ失敗はないということです。

 

すっきり上品な「同系色」コーデ

同系色コーデとは、水色の着物に紺色の袴、ピンク色の着物にエンジ色の袴といった組み合わせです。全体がすっきりと調和し、上品で落ち着いたコーディネートになります。この場合、暖色系だと柔らかな印象に、寒色系だと凛とした印象に見えます。ワントーンコーデのようなシンプルなスタイルを好まれる方は、同系色コーデがしっくりくるかも知れません。また、すっきりとした印象になるので、先生向けの派手さを控えたコーデと言えるでしょう。

同系色コーディネートの例

 

メリハリのある「反対色」コーデ

反対色コーデとは、クリーム色の着物に紫色の袴、ピンク色の着物に緑色の袴といった組み合わせです。全体にメリハリが生まれ、快活なコーディネートになります。お互いの色が強調され合うため目を引きやすいですが、色無地の場合は柄のある着物に比べてインパクトは控えめです。極端に目立つ彩度の高いビビッドカラーなどの色合わせを避ければ、先生の立場でも素敵に着こなしていただけます。

反対色コーディネートの例

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袴姿の印象を左右する「配色コーディネート」

 

晴れ着の丸昌 横浜店 年代別・人気ランキング

実際のところ、先生方にはどんな色無地が支持されているのか、丸昌 横浜店での人気ランキングを世代別にご紹介しますので、参考になさってください。

 

◆20代の先生の色無地人気BEST5

イエロー系など明るく若々しい印象の暖色系の色無地が人気です。

20代の先生に人気の色無地BEST5

◆30代の先生の色無地人気BEST5

一番人気は水色。グリーン系の中間色も30代には人気のカラー。

30代の先生に人気の色無地BEST5

◆40代の先生の色無地人気BEST5

40代はパープル、ブルーなど清潔感のある寒色系の色無地が人気です。

40代の先生に人気の色無地BEST5

◆50代の先生の色無地人気BEST5

暖色系も寒色系もランクインしているものの落ち着いたトーンが人気です。

50代の先生に人気の色無地BEST5

色無地の色選びについては、以下のページも参考になさってください。独特のニュアンスを持つ、日本の美しい伝統色を多数ラインナップしております。

▼日本の伝統色から選ぶ色無地【教員用】

https://www.haregi.com/iromuzi_tokusyu

 

最後に

すっきりとした印象で上品に着こなせる色無地を使った袴スタイル。生徒の晴れの場にふさわしい特別感はありながら、主役を引き立てる少し控えめな装いなので、先生にとってはうってつけの衣装と言えるでしょう。卒業式に何を着よう…と悩んでおられる先生は、ぜひ検討されてみてください。

 

丸昌 横浜店では、豊富なカラーバリエーションの色無地と袴をご用意しております。また、多くの方に美しく着こなしていただけるよう、着物や袴は身長140〜175cm、バストサイズ120cm、ヒップサイズ120cmまで対応可能なものをご用意しています。

▼LLサイズの着物と袴

https://www.haregi.com/llsize

 

フルセットでのレンタルなので、着付け小物などを別途ご用意いただく必要もありませんので、卒業式前の数ヶ月、たくさんの業務を抱えて忙しい先生のお手間を取らせません。また、会員登録をしていただくとレンタル料が15%オフになる先生会員割引もございますので、ぜひご活用ください。

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※こちらの記事で紹介した内容は、2024年1月の情報です。